不完全性定理とゲーデル 三題

うすらバカ事件について

キングオブうすらバカ」(あえてリンクしない)のあまりの出鱈目さに唖然として言葉を失なっていたのですが、くるるさんの適切なつっこみが出て、ほっとしました。ありがとうございます。元記事の出鱈目さは私の表現力をはるかに超えていて、今の私には手が出せません。

基本定理としての不完全性定理

いつもそこらじゅうで言ったり書いたりしていることだけど、また、書きましょう。

ほとんどの啓蒙書の類で、「不完全性定理ヒルベルトのプログラムに致命的な打撃を与えた」ってところだけ強調されているのが、不完全性定理を否定的な結果であるとみなす偏見を助長していると思っています。不完全性定理が数理論理学の基本定理の一つであり、肯定的な結果であることを、もっと紹介するべきです。

基本定理というのは、その定理の系としてさまざまな定理が導かれるもののことです。「不完全性定理からあれもこれも出てきます。便利ですよね」と強調する啓蒙書を希望します。そうすれば、不完全性定理といえば「限界」という偏見も少しは緩和されるのではないでしょうか。

ゲーデル個人の属性について

関連は薄いけど、ついでなので。

不完全性定理ゲーデル個人の属性に過剰に結びつけるなってことも、強調したほうが良いかも。当時、不完全性定理に肉迫していた人がそんなに多くはなかったとしても、ゲーデル一人ってことはありえません。その中でゲーデルが発見者となれたのは、偶然の結果にすぎないのですから。

タイムマシンで過去に行ってゲーデル不完全性定理の発見を妨害しても、いずれは別の誰かが発見したでしょう。その後の数理論理学の歴史は大きく変わるでしょうが、発見されずじまいということはありえません。

ゲーデルは大学入学に失敗していて数学界にはいなくて、かわりにフォン‐ノイマン不完全性定理を発見した平行世界とか、SFのネタとしておもしろそうです。エルブランが事故死せず、ゲーデルより先に不完全性定理を発見した平行世界とかもいいかも。チューリング(をモデルとした人物)が長生きした世界をネタに短編を書いたイーガンさん、書かないかな。