大学入試の数学で高校で習っていないことを使うと減点されるか?
これについて、さまざまな噂がとびかっているようです。ひどいデマも流れているようです。
入試業務に関わった経験からいえることは、次の2点です。これと矛盾する噂はデマだと思ってください。
- 高校で習っていないことを使ったことを理由として減点することは、技術的に無理。
- 高校で習っていないことを不適切に使って減点につながることはある。
技術的に無理
高校で習っていないことを使ったことを理由として減点することは、その是非を論じる以前に、ごく一部の例外を除いて技術的に不可能です。
大学入試の採点者は、そもそも、これこれは高校では教えていないと自信をもって断言できません。大学入試の採点者は大学教員であって、高校教員ではありません。高校で何を教えていて何を教えていないかの詳細を追いかけてはいません。それに、入試の採点は時間が限られています。高校の教科書を詳細に調べて確認する時間はありません。
例外があるとすれば、教員養成系の学部で、高校数学を専門とし高校数学の現状を常に追いかけている大学教員が、たまたま採点にあたる場合ぐらいでしょう。
追記1:
ここに書いたのは、採点者の話です。出題者は、時間をかけて、高校で教えている範囲の知識で解ける問題になっていることを確認します。当然、その過程で、高校で何を教えているかの調査をします。
つながることはある
要するに、生兵法は怪我の元です。
理屈をすっとばして丸暗記していると、適用条件の吟味を抜かしたり、さらには、適用できないものに適用しようとして間違ったりする危険が高まります。そうでなくても、無駄におおがかりな解法になってしまい、牛刀割鶏とみなされることもありえます。人によりますが、高校で習っていないことを使うとこの種の陥穽にはまりやすい傾向はあるでしょう。
ただし、この陥穽そのものは高校で習ったかどうかとは関係なくありえるものですから、高校で習っていないことを使うと常に危険な訳ではありませんし、高校で習った範囲に閉じこもれば安心というものでもありません。
選択公理の本(書評ではない)
読んだ(または、眺めた)ことのあるものを並べておきます。
Axiom of Choice (Lecture Notes in Mathematics)
- 作者: Horst Herrlich
- 出版社/メーカー: Springer
- 発売日: 2006/04/15
- メディア: ペーパーバック
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The Axiom of Choice (Dover Books on Mathematics)
- 作者: Thomas J. Jech
- 出版社/メーカー: Dover Publications
- 発売日: 2008/07/24
- メディア: ペーパーバック
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Consequences of the Axiom of Choice (Mathematical Surveys & Monographs)
- 作者: Paul Howard,Jean E. Rubin
- 出版社/メーカー: Amer Mathematical Society
- 発売日: 1998/07/01
- メディア: ハードカバー
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- 作者: 田中尚夫
- 出版社/メーカー: 遊星社
- 発売日: 2005/10/01
- メディア: 単行本
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教科書(近刊)
なんだか、面白そうな教科書が三冊も近刊です。
『数理論理学』(戸次大介)
東京大学出版会のこれから出る本のページに、数理論理学の教科書があがっています。
- 作者: 戸次大介
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2012/03/01
- メディア: 単行本
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目次から推測すると、学部の半期の講義の教科書を想定したもののようですね。
カット除去定理を日本語で読める教科書が増えるのはうれしい。
『ゲーデルに挑む』(田中一之)
東京大学出版会のこれから出る本のページには、ゲーデル本もあがっています。
- 作者: 田中一之
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2012/04/28
- メディア: 単行本
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こちらは目次が未掲載で、どんな感じか想像もできません。
内容紹介に「原論文の日本語訳とともにその内容について徹底解説」とあるということは、当然、PMですよね。
『今度こそわかるゲ−デル不完全性定理』(本橋信義)
なぜか、版元のWWWページではみつけられなかったけど、複数のネット書店で予約受付中です。たとえば、紀伊國屋書店BookWebでの予約ページ。
今度こそわかるゲーデル不完全性定理 (今度こそわかるシリーズ)
- 作者: 本橋信義
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/03/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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予約ページの「詳細」が全然詳細でないので、内容が想像つきません。早く版元のページにでも目次が載らないかな。
2012年3月6日追記:やっと版元のWWWページにあがりました。目次も載っています。
ETCの項目がさらに増えた
Encyclopedia of Triangle Centersの項目数が2011年12月26日付けで、3910になっています。2011年12月21日付けから128増えています。三部構成になる日も近いかも。
ところで、なにやらページがおかしくなっているようですね。タグが閉じていないところがあるし、ファイルの先頭と末尾にゴミが入っています。
ETCがついに二部構成に
Encyclopedia of Triangle Centers (ETC) が、2011年12月21日付けで、ついに二部構成になりました。
ETCは、三角形の中心の事典です。エバンズビル大学の Clark Kimberling 教授が、大学内と思われるURLのWWWページで公開しています。三角形の中心の解説つきリストが本体部分で、他に解説文書がいくつか付属している構成になっています。
その本体部分が、ついに、二つのHTML文書に分割されました。今回の更新の前までは、一つのHTML文書でした。掲載されている中心が今回の更新でついに3782個になり、一ページに収めるのは無理と判断されたのでしょう。
ところで、中心を数えるときの助数詞は「個」でいいの?
数理論理学の三大基本定理を扱う順番
学生向けレクチャーの計画の再検討が必要かと弱気になってきたので、手許の教科書を調べてみました。
Logic and Structure (Universitext)
- 作者: Dirk van Dalen
- 出版社/メーカー: Springer
- 発売日: 2011/10/30
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- 作者: 鹿島亮
- 出版社/メーカー: 朝倉書店
- 発売日: 2009/10/01
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- 作者: 新井敏康
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2011/05/19
- メディア: 単行本
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やっぱり、完全性定理からが定番ということで、予定通り完全性定理からでいいかな?