『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』断片的な感想のつづき(書評ではない)

数学ガール/ゲーデルの不完全性定理 (数学ガールシリーズ 3)

数学ガール/ゲーデルの不完全性定理 (数学ガールシリーズ 3)

この記事はネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
(以下、50行空行)


















































第10章の第一不完全性定理の証明は、おもいきり古風です。現代風の(「現代の」ではない:後述)教科書では、まず採らない方法です。正直、初見では「えええ、PMかよ、素因数分解かよ」と思いました。しかし、読み返して考えが変わりました。あえて古風な方法を採ったことにミルカさんのメッセージが込められているんだと考えると、これはとても味があります。現代的なルートを通らずに先人の跡をたどったことで、ミルカさんは「僕」に伝えたかったことがあったんでしょう。そう考えると、直前までとストーリーがつながります。

ただ、「僕」にそのメッセージが伝わったかどうかは、こころもとないですが。

ちなみに、今から教科書を執筆するなら、たとえば、次のようになるでしょう。まず、PA(または、それより弱い適当な体系。以下同様)で第一不完全性定理を証明します。次に、PAを含む体系Tがかくかくしかじかの条件をみたせば、元の証明のこことここに手を入れればTにも適用できることを示します。その実例として、たとえば、ZFCがPAを含むことを示し、ZFCの不完全性定理を示します。

現代の教科書でも、あえてゲーデルの方法でPMについて証明をしているものはあります。その教科書には、なぜそうしたかの説明がちゃんと書いてあって、それは納得できるものです。現代の教科書が現代風でなくてはならない必然性はありません。